映画「アリー／スター誕生」を見た。

レディー・ガガ初主演映画ということで話題になるだけあり、音楽はとてもよかった。
ワイドショーなどでもたびたび話題になるように、音楽やステージを職業とする人たちの中に、アルコールやドラッグの問題を抱える人は少なくないようだ。ステージと創作のプレッシャーからと表面的に捉えられることが多いようにも思うが、むしろそのような舞台を選んだり、目指した背景として存在する、幼少期からの傷に由来するものだろうと思う。

これらは本人の問題というよりも、その家族に限らず、社会の価値観も含めて何世代も積み重なってきたこととしてとらえる必要がある問題である。最近ではそのようにとらえる書籍も少しずつ増えてきている。

心の傷は遺伝する

• 作者: マーク・ウォリン
• 出版社/メーカー: 河出書房新社
• 発売日: 2019/02/16
• メディア: 単行本

「心の傷は遺伝する」という邦題はセンセーショナルだが、遺伝といわれると抗えないもののような印象を持ってしまう人も多い気がするので、あまり適切とは言えないように思う。英題を見ると「It didn't start with you」であり「あなたから始まったことではありません」、つまり「あなたのせいではありません」とも言えるタイトルとなっている。

この映画では、抱えている闇、傷をちら見せはするものの、それ以上には踏み込まないところが残念である。そしてこの作品自体が、まだ「そういうこともある」と無理矢理納得させようとし続けている姿勢そのものにも見える。
この映画はもともと1937年の同名映画の４度目のリメイクということであり、だからこそそういった問題を中心に扱う話ではないということだろうが、80年経って2018年に作られる意義は正直よく分からなかった。
だとしても曲と歌はよかった。

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• 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
• メディア: Blu-ray

心の傷は遺伝する

• 作者: マーク・ウォリン
• 出版社/メーカー: 河出書房新社
• 発売日: 2019/02/16
• メディア: 単行本

映画「ファースト・マン」を見た。

始まりは「ザ・ライトスタッフ」か？はたまた「インターステラー」か？と思ったが、そもそも内容的にも「ザ・ライトスタッフ」は遠い話ではない。
しかし、2018年のこの映画は、1980年代に作られた「ザ・ライトスタッフ」とは全く切り口が違う。勇敢な挑戦者達の話というよりもむしろ、過酷な現場で働く人間とその後家族の話と言えるだろう。この映画では、訓練のシーンも事故のシーンもミッションのシーンも、実に「怖そう」なのである。
今年の春、JAXA職員の自殺が労災として認められたというニュースがあったが、今まで「歴史的」「英雄」という名のもとに覆い隠されていた、生身の人間の生き様が、やっと描かれる時代になったのかもしれない。
もちろん、宇宙に人を送ることに反対する意図はない。私自身、子どものころは宇宙の図鑑が大好きだったし、ロケットやスペースシャトルの打ち上げ、帰還にもわくわくした。
しかしながら、目標の達成のためには、人間が自然に抱く感情には目をつぶってよい、つぶるべきだという発想があるならば、それには反対である。
シンプルにかっこいいとか、すごいとか思える映画ではないが、程度の差はあれ過酷な現場で働く人たちの切実な思いが、当たり前のものとして存在を、認められることは、実に大切だと思える映画だった。

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• 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
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ファースト・マン 上: 初めて月に降り立った男、ニール・アームストロングの人生 (河出文庫)

• 作者: ジェイムズ・R. ハンセン
• 出版社/メーカー: 河出書房新社
• 発売日: 2019/01/22
• メディア: 文庫

ファースト・マン 下: 初めて月に降り立った男、ニール・アームストロングの人生 (河出文庫)

• 作者: ジェイムズ・R. ハンセン
• 出版社/メーカー: 河出書房新社
• 発売日: 2019/01/22
• メディア: 文庫

映画「ボヘミアン・ラプソディ」を見た。

映画「ボヘミアン・ラプソディ」を見た。
まず、20世紀フォックスのロゴが映るところまで、ギターサウンドになっているところがうれしい。



以下、ネタバレがありますので、ご注意ください。

ボヘミアン・ラプソディ 2枚組ブルーレイ&DVD [Blu-ray]

• 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
• メディア: Blu-ray

さて、この時代にこの映画が作られたか。
あえて言いたいのだが、この映画はLGBT...の映画というより、むしろ発達性トラウマ障害の映画と言っていいだろう。
発達性トラウマ障害はまだ国際的な診断基準には含まれていない。2018年にリリースされたICD-11に、やっと記された複雑性PTSDは発達性トラウマ障害に近いものだが、発達性トラウマ障害ではより、感情、対人関係、生理学的な不安定さが強調されている。
（少なくとも）この映画に描かれているフレディ・マーキュリーの生い立ち、生育歴はかなり過酷なものである。
今やっと、しつけの名の下の暴力が問題となりうるようになったが、厳格な父親のもと、その父親の価値観以外は認めないような環境で、自身の感じ方を認められずに育つことが、虐待と同様の傷を子どもに与えるということが、世間一般の常識になるにはあと何年かかるだろうか。
だからこそ、最後のライブエイドのシーンは泣けるのだと思う。
そして、LGBT...に限らず、私たちは常に、理解のある親（的存在およびその作業）を求めている。それは、少し前の時代を生き、さまざまな傷を負ってきた生物学的な親たちには無理難題かもしれない。そして幼かった時代の自分自身に必要な関わりを本当にわかるのは、大人になった自分だけかもしれない。
今、それを自分の中の、幼い時代の自分に提供できる、そのためのヒントのような映画だったからこそ、多くの人たちに受け入れられたのではないか。そうであることを祈りたい。

映画「バイス」を見た。

映画「バイス」を見た。
変な意味で、何かじわじわとくる映画だった。

ネタバレありますので、ご注意ください。





「地球温暖化」が「気候変動」になる、よくあることの陰に何があるのか、見せつけられた。そしてこれは、全く他人事ではなく、日本でもまさに今起こっていることであると言えるだろう。もちろんそれは、この映画で描かれた、副大統領がどうのこうのという意味ではないが。
いろいろな物事には、裏がある。手品師が何かを取り出す時は実は何かをしまう時だったり、逆に何かをしまう時は、実は何かをこっそり出していたり、表で言っていることと、本当にやっていることは、イコールではないのかもしれないと、意識しておく必要はあるだろう。そうでないと、容易に右手のコインが消え、左手に移動するというようなことが、あっという間に起きてしまうことになる。起きないはずのことが、こっそり行われた周到な準備によって、起こされてしまうのだ。
そう考えると、男性が仕事で目指す権力とは、よく言われる支配欲ではないとかねがね思ってきたのだが、最終的に「利権」につながっているのだろうという気がしてくる。承認欲求とは少し違い、システムとして特別扱いされることへの欲求であろう。だからおそらく、各種ロイヤリティープログラムで上級会員を目指したくなるのだろう。そしてその利権を、個人的なことに利用したいのである。そういうことが男性にとって、何かしらの認められた感をかたちづくることは、ある意味実に興味深い。
そんな、世の中を新たな視点で見始めるきっかけとなる映画だった。

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